こんにちわ地球さん

どうにでもして〜!

コンビニ①

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高校一年の頃、数ヶ月の間サンクスでバイトしていた。入った理由は単純に小遣いが欲しかったからで、辞めた理由は商品をくすねていたことが店長にバレてクビになったから。なかなかにクズだった。

その店には6、7人ぐらい高校生のバイトがいて、うち5人は商品をくすねていた。僕は最初、廃棄のおにぎりなんかを1人でこっそり持ち帰るだけだったが(そこは廃棄の賄い化を禁止していた)、惚れていた女子バイトに「実は俺廃棄もらってます」って打ち明けたら「実は私も」って返ってきて、以来二人で店番する時は、示し合わせて欲しい廃棄をパクるようになった。悪い秘密を共有する行為はめちゃくちゃ官能的だったし、実際その子との親密度は倍増した。廃棄の量は日によってまちまちで、やはり弁当が一番の狙い目。中でもカツ丼は滅多にお目にかかれないレア物だったが、そんなレア物が廃棄に登場した日でも、その女子に譲るぐらいには惚れていた。カツ丼があると知りながら「いいよいいよ、欲しいの先に選んじゃって?」と笑顔で一人レジを捌くのが、当時の僕の持ちうる限りの男気だった。

そのうち他の気の合うバイト仲間とも廃棄をくすねる一味が結成され、カツ丼という名のワンピースを求めて僕たちは旅をした。しかし所詮ガキというか、エスカレートして商品にも手を出すようになり、ある日の店長の抜き打ち来店によって廃棄海賊団は御用。芋づる式に、僕もその女の子も含めた4人の犯行がバレてクビになった。1人だけ難を逃れた。

惚れていた女の子は一学年上の先輩で、小柄で可愛らしく、知る人の間では割と人気だった。バイトの前に家でシャワーを浴びてくる人で、動く度に洗いたての髪からヘアコロンシャンプー・ティセラの香りがするもんだから、中学出たての少年には刺激が強すぎて、バイト中に自分のおっことぬし様を鎮めるのには大変に苦労した。そうかと思えば真夏のバイト終わりに、その子の裸足から漂う臭気を偶然嗅いじまって、おかげで僕は知らなくてもいい自分の一面に気付かされたりした。「くさい」と「エロい」が両立すると気付いた時は、「死」について初めて考えた時以来の畏怖に襲われたものだ。変態という一生解けない呪いを無差別にかけて回ってたんだから、今思えば恐ろしいスケだった。

客も時々変なのが来る。スーパーで豆腐なんかを入れるような薄手のビニール袋に、10円以下の小銭を入れて煙草を買いに来るホームレスあたりは印象的だ。体臭がドギツイので早急に捌きたいんだけど、べたつくような小銭をレジに広げて店員に数えさせるという困った爺さんだった。息を止めて小銭数えてるうちに「今何円だっけ?」という時蕎麦みたいな状態になって、ブラックアウトしたくないのでもう諦めて煙草を渡したりした。

そんなホームレスとの関わりだとか、今まで触れてこなかった社会のモヤっとした部分に、コンビニバイトで初めて触れたのかもしれない。生理用品を普通にビニール袋に入れて怒られたり、煙草を注文されてソフトだかボックスだかライトだかスーパーライトだかよく分からずに適当に出して怒られたりしながら、大人になったような気もする。生理用品だけを買いに来たOLが「トイレ貸して下さい」と言う時の鬼気迫る表情や、トイレの床に無造作に捨てられた生理用品のゴミに、女性という生き物のリアルを教えてもらった気もする。

同じバイト仲間の高校生には、TMN好きのナルシストソロキーボーディスト、年上だけどバイトとしては後輩のヤンキー、モデル志望のため美肌意識がやけに高い男など、色んなタイプの人がいた。僕は当時ブルーハーツが大好きで、ヒロトがライブでよくやる、舌をペロペロ動かす仕草を真似しながら店内を掃除していた。まったくどうかしている。